こちら孤島のまどよりお便りします

円野まどの恥の多い日々の記録

「絵なんか見ても面白くない」という人と美術館に行った話

〒みなさま

皆さんこんにちは、円野まどです(*´∨`*)

相変わらず時間の使い方がへたですこし空いてしまいましたが、気軽に私生活を書けたらいいなあと思っています。最近映画をよく見るので、映画の感想とかもそのうちまとめたいです。今日は「絵なんか見ても何も面白くない」とよく言っているお友達と美術館に行った時のただの日記です。ここしばらくそれが続いているように、本当にただの私生活なのですがよろしければヒマつぶしにでも読んでいただけたら幸いです(っ´ω`c)

 

「絵なんか見ても面白くない」という人と美術館に行った話

 

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登場人物

   筆者円野まど。ひきこもりの甘ったれ。

D   ディー。本当にこの名前で周囲に呼ばれている。最近二年ぶりに海外から帰国した私の知人。黒髪で長めのショートヘアの女の子。口調はつよめの27才。(詳細は以前の記事に)

 

*はじまり

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「絵なんて見て何が面白いんだよ~。」

私のベッドに頭だけを預けながらディーは言った。

仕事の帰りにわたしの部屋に寄った彼女が「明後日一緒にランチしよう」と誘ってくれたのだけど、その日は美術館に行く予定があった。それを伝えると、ディーはなんだかとてもげんなりした顔をして暫く黙った後で先程の質問をしてきたのだった。

一度目を合わせて「へへへ」と笑っただけで私は何も答えない。ちょうど進まない仕事を端に置いてコントローラーを握った所だったのだ。冷蔵庫から出したばかりのコーラがつめたくて美味しい。

「ねえ、何が面白いのって!」

返事が遅かったらしく、ディーがちょっと大声を出したので私は噴き出した。彼女はたいへん面白い女性で、その忍耐力と好奇心は小学生男子と大体同じ量だ。目に見えていらいらして手に持っていたお菓子の袋を細かく割き始める様子に「ディーは短気だなあ」と言ってニヤニヤ笑った。まあまあと左手で「ストップストップ」みたいな動きをする。この余裕がすこしお姉さんぽいと我ながら思う。いつも面倒をみてもらう側なので、面倒をみる側の景色がちょっと心地よかった。しかし彼女は次の瞬間スッと真顔になりPS4のコードに手をかけようとしたので、私は情けない声をあげた。

「わー!ごめんなさい。ごめんなさい!すいませんでした!待って、これだけ。これだけこの一体だけ!一体だけ倒したら話そう。話し合おう。ね?ね?ね?ね?!

謝り倒しながら私はなんとなく、何歳になっても自分はこうなんだろうなと思った。

*絵の面白さがわからない

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「何が面白いかあ。」

一旦落ち着こうと飲み物を用意する。グラスに炭酸水を注いだ後、モヒートシロップを少しいれる。涼しそうな香りがした。ディーは私のベッドに頭をめり込ませて遊んでいる。炭酸水を手渡すとのけぞりながら器用に飲んだ。眺めていると、彼女は質問を続けた。

「私さあ、昔っからアートって何がどういいのかよくわからん。芸術が好きっていう人って皆なんかこう思い込みが激しいように見えるんだよね。」

「思い込み?」

「うん、背景に想像膨らませて勝手にすごいものにしてるっていうか。絵描くやつ以外が絵を見てすごいって思えるもんなんかよくわからん。少なくとも私にはよくわからん。税金対策くらいにしか思えない。」

絵が好きな人を批判するような口調ではなくて、未知の生物について想像するような言い方で彼女は疑問を口にする。言葉を探しながら話しているようだ。

「それで、絵って何が面白いの?」

硝子のように透明な、とてもきれいな問いかけだった。

ディーは多くの人が支持していることを「なんとなく」理解したふりをしない。皆がいいものだと言っているからといって、理由もなしに価値を認めることもしない。きちんと自分の頭で考えている。だからこういう率直な疑問が出るのだろう。「芸術」という存在そのものに懐疑的な彼女の感性がすきだと思った。

何でも疑問をもつことはいいことだ。何かの謎が解けるとき、多くは「なんで?」とか「こうするとどうなるんだろう」というきっかけをもつことから始まるのだから。

分からないことや納得できないことと向かい合うのは大切なことだ。出来るだけ丁寧に答えたい。けど、私はあんまり話が上手じゃないのでうまくいえるか不安になってくる。その時説明が上手なお友達のことが浮かんで、私の脳内を見せるから代わりに話してもらえたらいいなあと思った。

絵が好きな人はみんな、どんな風に答えるのだろう。

*絵は何で面白いのか

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私は美術品を見るのが好きだ。

出来るだけ短くなぜ好きなのか説明しろといわれたらたぶん「感動するから」と答えるだろう。感動が与えるものは計り知れない。それは私のようなできるだけ引きこもって誰かと摩擦や刺激を起こさないようにこっそり呼吸するタイプの人種を外に出すことすらできる。けど、それは思い込みの延長といわれたら、よくわからなくなった。

「思い込みといわれたらこの世の殆どのことは思いこみなのかもしれない。」

重めに口を開くとディーはそれをぴしゃりと断じた。

「そこまで哲学的に答えてくれなくていい。」

「どっどのくらい話したいの。」

「絵をみて何が面白いのってこと。まどちゃんの答えでいい。」

私の答え、と考えながらストローを齧りはじめるわたしに、ディーは唇だけで「やめろ」と言った。

「絵にもよるけど、表現力に感動することが多いかもしれない。」

「表現力?」

「たとえば・・・・、ちょっと待ってね。」

立ち上がって隣の部屋から画集を幾つか持って来る。それから机に出したままのブロックメモに猫を描いた。ディーは猫が好きなのだ。

「たとえば、私の描いたネコがこう。」

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「ひどいな。」

「うん・・・。」

正直で無垢なるディーの感想に心をえぐられながらも話を進める。それから先程、自分のまわりに積み上げた画集を一つ一つ開いていく。

「これが菱田春草の描いたねこ」

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菱田春草 黒猫

 「これがピエール・ボナールのねこ」

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ピエール・ボナール 白い猫 

「白猫といえばこれが熊谷守一の描いたもの。」

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熊谷守一 白猫

「これがピカソの猫」

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 パブロ・ピカソ ロブスターと猫

それから、レオナールフジタとか色んな画家が描いた猫を見せ続けた。

私は自分の話や気持ちに耳を傾けられると、緊張したり(こんな話をして迷惑じゃないかな)とか思い始めてしまって言葉に詰まってしまうときがある。この時もたびたび(話が長くないかな)と不安になって、ディーの目を見つめ返したりしてしまったのだけど彼女は言葉を挟まず、とてもとても真剣な顔で続きを促してくれた。

「猫の絵を描いてもどうしてこんなに違うのか。猫の輪郭を表すための線ひとつとっても『この形が猫だ』と思ってどんな線を選んだのかでそのひとの感性がでるんだよ。」

なんとなく、どきどきしながら話をした。ディーは教室にいる子供のように、黙ってわたしに向き合い、時折深く頷く。自分に注目されると、顔が赤くなって何度も言葉がつかえた。頬の表面がびりびりするような心地がした。

「えっと。私は人とお話したり接したりするのは苦手だけど、人の感覚や感性を分けてもらうのはすきだな。ずっと前の時代の人だったり、知らない人とか、遠くに住んでいる人とかって本当は会えなかったはずのひとだよね。絵を見ることはそういう人たちと会えるみたいですごくラッキーな気がするよ。確かにそれって思い込みの一つかもしれないね。けどそういう思い込みは楽しいものだと私は感じるよ。」

胸の前で指をなんども組んだり外したりしながらなんとか話す。ディーは画集をめくりながらやさしくもつめたくもない声で「ほんとうにいつも何でも正直に答えるね。」と言った。

それからおそらく数分くらい彼女は何も喋らず、自分も猫を描いてみたりしながら、あれこれ見比べていた。私はその数百秒のしんとした時間で、もっとうまい説明ができないか考えたのだけど何も浮かばない。

ディーの横顔を見てると、好みを押し付けたような気がして不安になってくる。膝に載せたクッションを潰すように抱きしめて「絵のことがきらいでつまらないと思ってもいいんだよ。」と声をかけた。

私は私の好きなものを私のすきな人達が興味をもてなくても、それはそれでかまわない。一緒に好きでいられたら倍楽しいのかもしれないけれど、意見が一緒である必要なんてぜんぜんなくて、違うこともおもしろいと思う。それにそばにいる人とお互いの幸せを願えるならそれだけでいい。それを出来るだけ簡単に伝えようと悩んでいると、ディーは私を観察するように見た後でちょっと静止する。そのまま彼女が話し始めることを期待したけど、ふっと顔をそらしてまた画集を開き始めた。

それからこちらを向かないまま、どこか弱気な声でこう言った。

「絵がわからないのに美術館について行くっていったら迷惑?」

 

*美術館へ

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2日後、東京国立近代美術館にディーと一緒に出かけた。

自分はいないと思っていつもの通りにまわってほしいと言われたので普通に順路を進む。それぞれ自分のペースで見て、終わったら合流しようと話した。

ディーは美術館と戦う気でもあるかのように、険しい顔をしていた。

出口にあるベンチで感想を少し話し合った。

やっぱりディーにピンとくる絵は殆どなかったようだけど、猫の絵を見つけて、「どうしてこういう絵になったんだ?」と考えるのは少し楽しかったと言っていた。

「まどちゃんはひとつの絵の前にしばらく立っていたね。」

私はその絵をみるためだけに、今日ここに来たことを答える。

「まどちゃんはあの絵がそんなに好きなんだね。」

へえーと言ったあと、突然優しい顔になってにっこり笑った。

なぜ笑ったのかはわからなかったけど、彼女が楽しいかどうか心配だったのですこしほっとする。でもディーが美術館にいるのはまだちょっと慣れない。自分の好きなものについて興味をもたれるのは、なんだかすごく、不思議な感じだ。相手はどんなことを考えているんだろう。でもとりあえず、私は目的を達したのですぐに家に帰って閉じこもりたい。それからゆっくり、考えよう。

 「絵なんか見て何が面白いのかなーってずっと思ってたけど」

ディーの話を聞きながら、靴の先っぽを眺める。虹やかまぼこと同じ曲線だ。

「なんか、絵が面白くないかどうか判断できるほど、絵を知らないんだなって思ったらすこしだけ興味でてきた。」

「無理しなくていいよ。」

「興味でてきたっつってんだろ。人の話を聞け。」

ほんとだなと思ってちょっと神妙に頷くと、ディーは私の背中を強めに押した。2人とも笑う。

自分が1人でしてもいいと思っている事を、一緒にしたいといわれることは不思議だ。

ディーは自分を「利益最優先のつめたい人間」と自称する。言葉がきついことも直す気はないといいつつ、気にしている。でも私から見たらとても優しいひとだ。彼女は事情があってあまり社会のことを知らない私を一度もばかにしたことはなく、どんなたどたどしい言葉も、遮ったことはない。

「嬉しかったよ、私けっこうズケズケ聞いちゃうのに、一生懸命答えようとしてくれて。」

「ああ、絵のこと?」

「うん」

「聞いてくれて嬉しいけど、自分の気持ちを話すのはすごく緊張した。」

「うん、そうだろうなと思った。だからしばらくは質問しないよ。ありがとう。」

そんな小さな約束をしてそれじゃあ最後にミュージアムショップに寄ろうということになった。ベンチから立ち上がるとすぐに、ディーは何かに気付いたようで入り口付近のガラスケースに駆け寄っていく。私はぺたぺたそれを追いかける。ディーの視線の先には美術の教科書にも載っているであろう有名な木彫りの猿が置かれていて「ああ、これも今回展示されるんだ」と思わず呟いた。

するとディーは眉毛を寄せて、好奇心に満ち溢れた目を輝かせ

「ねえ、彫刻って何が面白いん?」

と聞いてきたのだった。

 

*あとがき

ディーは彫刻になんだか感じ入るものがあったようで、その後おすすめの彫刻家をきかれたりしています。皆さんもお好きな作品があればぜひ教えてください( *´꒳`* )。

多くの人が価値を認めるものに対して抱く疑問を「普通は」とか「皆は」という言葉で封じたくないなと思います。自分の力でものの価値を定めるのは大事なことです。

学校や仕事に行くのがイヤでも、ナイフとフォークで食事をするのが嫌いでも、ダイヤモンドが欲しくなくても、イケメンや美少女を敬遠することも、自分が正直にそう感じるならそれでよくて、大切なのは「自分が本当にすきなものを知っておくこと」だといつも思うのです。そうしないと、いつのまにかそれを手離してしまうかもしれないから。

限られた時間の中で「本当にすきなもの」とできるだけ多く過ごしたいので、見間違えのないようにしたいなとよく考えています。( ∩ˇωˇ∩)今を保存できたらいいけど、時間はほんとにあっという間に過ぎてしまいますね。

それと、わからないことをわからないと言えることはすばらしいことだと改めて思いました。ディーが私に疑問をぶつけてくれたことがとってもうれしかったです。

好きな人達の「わからない」から始まることは、きっと面白いことにつながるから、これからもわからないと伝えてもらえるように努力したいなあと思う一日でした。

それにしても、好きを説明するのってちょっと難しいですね。ほんとうに好きな時ってあんまり具体的な理由がないのかもしれません。

「絵って何が面白いの?」と聞かれたら皆さんならどんなふうにお答えしますか?

いろんな種類のお返事を彼女に伝えられたらいいなと思った一日でした。

ちょっとまとまらないお話ですいません、読んでくださった方がいらっしゃったらありがとうございます( ∩ˇωˇ∩)

良かったらみなさんの猫もみせてくださいね。

それではまたお便りします( *´꒳`* )

 

円野まど

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 ディーの描いた猫