こちら孤島のまどよりお便りします

円野まどの恥の多い日々の記録

友達がブスと言われるのを見ていた話

〒みなさま

 

皆さんこんにちは、円野まどです(*´∨`*)

私は花粉症になりかけ・・・であってまだ花粉症ではないといいなあという希望をもって日々目をこすっていますがお元気でしょうか。

いつもながら、ただの私生活を記載した日記ですがよろしければヒマつぶしにでもなれば幸いです。(っ´ω`c)

 

友達がブスと言われるのを見ていた話

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登場人物

    筆者円野まど。ひきこもりの甘ったれ。

Yちゃん 大学生の時バイト先で知り合ったお姉さん。あだ名は「キュン」ブログに出てくるYちゃんは全部キュンのことです。

 

*キュンはとてもきれい

 

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新宿でご飯を食べた後、もうちょっと話したいから私の家に来たいとキュンが言った。

珍しいな、と思った。彼女はどちらかというと人付き合いの淡白な人で、一食分くらいの時間を過ごしたあとも話したいということはあまりなかった。

「うん。」

私は短く了承しながら、改札をくぐる。20時の新宿駅はぎゅうぎゅうに人がいて、帰る人とこれから繰り出す人の見分けがつかない。振り返らないまま構内を進み、ホームへ向かうエスカレーターに乗る。やっと一息つくと、見上げた先から吹く風が髪の中を通り過ぎていった。

「もう寒いって感じじゃなくなったね。」

後ろからキュンが話しかけてくる。

「そうだね。」

すっかりあたたかくなった夜の居心地が好きだなと思って「一駅前で降りて、散歩しながら帰ろう。」と提案した。そしたら彼女は目を細めるように笑った。

「すぐ歩きたがる。」

まるで母親が子供に言うような、見透かしと優しさを含んだ声だった。

彼女は私より少し年上だけど、それを差し引いても随分落ち着いた人だと思う。キュンはちょっと小さな声で必要なことだけぽつりと喋る。そういえば彼女が大声を出しているのを殆ど見た事がない。

そんな事を考えながら背が170センチちょっとあるキュンを見上げていると、ホームで横に並んで同じ電車を待つ女の子たちが視界に入る。彼女達もキュンのことを気にしているようだった。さりげなく耳をすますとキュンを指差して「きれい」と言いあってる声が聞こえてきた。

こういう時、言葉では表せない「!」という気持ちになる。

キュンは目立つ人だ。背が高いだけじゃなくて、細くて手足も長い。おしゃれで、目は切れ長で色白。まつげも髪もオレンジがかった茶色をしている。彼女を知らない人から「あの人はモデルなの?」と聞かれることもたびたびある。

やっぱり誰が見てもきれいなんだなあと思うとなんだかにやける。好きな人が世界に好かれているのは嬉しい。このことをすぐにキュンに言いたい。けれど以前、人目のある所で容姿を褒めて「恥ずかしいからほんとうにやめてね」とほんとうに、のところを強めに怒られたことを思い出す。だから電車から降りた後で言おう。キュンはとてもきれい。どうしてかあまり自覚がなさそうだけど、キュンはとってもきれいなんだ。そのことが、なんだかうれしくなる。

うきうきして手を握ったり開いたりしていると、横目で視線に気付いた。

「まどちゃんは可愛くていいなあ。」

「ぜんぜん。何いってんの。」

私は褒められるとどう返事をしていいのかわからなくて、冷たい早口になる。本気にして調子にのってると思われるのも怖いし、自分で全然そう思わないことで褒められることが多いからだ。相手がバカにするつもりで話しかけてきてると思ってるということになるよ?という至極まっとうなお叱りをうけることもあるけれど、褒められると知能が低くなり、そのような論理的なことは考えられずとりあえず跳ね返しの呪文を唱えている。

「そういえば電車降りたら楽しい話あるから!」

そんなことより、と思って大声を出した。キュンはその様子に苦笑いをして、口元ですこしだけシーッと指をたてて頷く。その後何か話そうとしたけど、最初の言葉はホームに響くアナウンスにかき消された。まもなくして轟音と共に電車が到着する。私達はとりあえず、それに乗り込んで降りようと話した駅までスマホを見たりして過ごす。

私はこの時、とにかく降りたらさっきキュンがきれいだねって言われてたことを話したくてたまらなくてそればかり考えていたから、彼女がどうして私に「かわいいね」って言ったのか、想像もしなかった。後からよく思い出したキュンは、どこか寂しそうな顔をしていたというのに。

 

*恋の話

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電車から降りて歩き出すと、もう殆どの人が真冬の分厚いコートを着ていないことに気が付いた。こういう時、もういけると思ってコートなしで出て帰り寒かったりするんだよなあとか考えていると、キュンのスマホが鳴った。

「あっ。どうしよう、仕事の人だ。出てもいい?」

もちろん、と答えた後、彼女が首に巻いているマフラーをぎゅうっと握り締めるのが見えた。それからほんの数分の、仕事の内容混じりの話だったけどいつも落ち着いてる彼女が何度も何度も、目の前にいない相手のために前髪を整えているのを見た。

恋愛ごとに疎い私でもこれは、もしかして好きな人と話しているのでは、と思い始める。そわそわしながら終わるのを待つ。キュンがその電話を切る時言った「また。明日」が「好きだよ」をいう時みたいでどきっとした。

「言いたいことはわかってる。」

よほど私がニヤニヤしていたらしく、キュンが私を横目で睨む。スマホをバッグにしまいながら「ほんと小学生なんだから」と呆れている。言葉では私を叱るけど、彼女は目に見えて動揺していた。コートで手を拭くような仕草を繰り返しながら、困ったり笑ったり、色んな表情をする。

「大丈夫、私ちゃんと聞けるよ・・・。」

「何も大丈夫じゃない。すごいニヤけてるもん。すぐひやかすんだから。というか、もともと今日その話しようと思ってたから後でね。」

「なるほどなるほど~なるほどねえ。ふふ、ふふふ。」

「・・・もう話すのやめようかな。」

「あっあっごめんなさい、本当にすいません。まじめな顔で黙れます。」

それから私の部屋で、彼女が最近仕事先で知り合った人が気になっていること、仕事帰りによく一緒になるけど食事に誘うべきか迷っていること、今まで付きあった誰よりもその人と話すと緊張してしまうことを聞いた。

「私ブスだから、好かれたら迷惑だろうなあ。」

話の合間に、キュンがそんなことを言うので驚いてしまった。

さっきの駅で女の子に憧れのまなざしで見られたことを身振り手ぶりをまじえて話す。

こういうことは初めてではないし、友達のひいき目抜きにしてもキュンはきれいだ。事実も実力もあるのに、彼女は絶対に自分が美人であることをちょっとも認めない。なんとなく、私と同じで(調子にのってると思われる)のが不安なのかな、と思った。だから私は必死で説明する。

「だいじょぶ!私本当に思ってるよ。調子に乗ってるなんて思わない。キュンがきれいなのは事実なんだよ!」

キュンはそれをはいはいと聞いたあと、コンビニで店員さんが「760円になります。」という時のトーンで「ありがとう。」と言って終わらせた。

「ちゃんと聞いてよー!」

頑張って抗議する私の様子を見てキュンが笑っている。大口をあけない、頬を軽く引き上げるように上品に喜ぶ彼女を見て、私もにっこりした。

その夜彼女が帰るまで、こんなにきれいで優しいひとを嫌いなひとはきっといないだろうなと何回も思った。

*キュンのお母さん

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私がその話を聞いてから一週間たった頃、キュンとそのお母さんと渋谷でばったり会った。私とキュンのお母さんは初対面ではない。懐かしそうに迎えてもらえて、少し立ち話をした。その後、これからお昼ご飯に行くから一緒にと誘われて、ファッションビルの上にあるレストランフロアに向かう。キュンのご両親も数年前までは横浜に住んでいたのだけど、子供たちの独立と同時に実家のある九州に戻っている。今日は久々にキュンやその妹の所に遊びにきたのよと説明してくれた。

渋谷の街並みがよく見える窓際の席に通される。お母さんはとても無邪気にはしゃいでいて、目上の方ながらとても可愛らしかった。外を指差して「あのビル知らない!いつできたのー!」と質問を重ねる。キュンはやっぱり口数は少なく、隣でニコニコして頷く。お母さんと私の会話が盛り上がっていった。

「この子はこんな年になって浮いた話もなくって。恥ずかしいわあ。」

注文した料理を待つ間、お母さんは何気なくそう言った。私はアイスを追加注文しようかしぶとく迷いながら「キュンさんは綺麗で皆の憧れですよ。」と答える。和食の店のサイドメニューにきなこアイスとか、小倉アイスとか最近よくある。正直、そこに季節限定のずんだアイスとかいれられるともう、私に抵抗する力はない。

「まどちゃんは優しいからねえ。そう言われていい気になったらだめよお。キュンはブチャイクだけどスタイルだけはいいからね。それを好きになってくれる人がみつかるといいわあ~。」

キュンのお母さんがあまりにも柔らかく、いい天気の話でもするようなおおらかさでそれを言ったので最初はうまく飲み込めなかった。でも反射的にキュンの顔を見る。特に傷ついた様子もなくいつもの顔をしているので、今の発言は悪気がないことなのだとホッとする。

「妹のほうは私に似てるんだけど、キュンだけお父さんに似ちゃってねえ。のっぺりした顔で背も男の子みたいに高いでしょ?これじゃあ、男の人のほうが引いちゃうわよねえ。」

私は一瞬間をあけてしまう。無意識に自分を再起動して、笑顔のまま首を横に振った。キュンの顔を見る。やっぱり、「これ食べる?」と聞く時のような何でもない顔をしていて、私と目があうと「ん?」と言いたげに顔を優しく緩めた。なんとなく、気持ちがざらざらしているとすぐにお料理が届いた。海鮮丼とうどんをセットにしたカロリー的には大変いけない品を頼んでしまったけれど、どちらかなんて選べなかった。アーメンと思いながらお箸を手にとる。

「今、アーメンって思ったでしょ。」

「なっ、なんで分かった。」

「わかるよ。よく言ってるじゃん。」

キュンが食べる前の私を見ていたようで冷やかしてくる。彼女は冷たい山菜のおそばが好きで、それを頼んでいた。ふふふと笑いあっていると、キュンのお母さんがちょっと顔を顰める。

「キュン!あなたなあにそのブスな顔!笑わないほうがいいわよ。一重まぶただから目が見えなくなっちゃう。ねっ?あはははは!」

ねっ?の前までは深刻そうな声を出して、それからオチをつけるように声をあげて笑っている。悪気があるようには見えない。窓から見える新しい建物に関心をもったときと同じ、わくわくした瞳だった。キュンはやっぱり、無反応だ。何か特別なことが起こってる様子はない。さっきと同じ顔で「やだもう。」と失敗を教えてもらった時のように照れた。

「ブスにはブスの生き方があるからキュン。あなた体重だけは増やしちゃだめよ。」

励ますようにキュンの細い肩をつかむその手を見ていると、口の中につめたい砂が入るような心地がした。そういえば、私が外見を褒める時、キュンが嬉しそうな顔をしたことが一度もない。

「東京には色んな趣味のひとがいるだろうから、物好きがはやくキュンをもらってくれないかなあ。お化粧してやっと普通の顔面よね、この子は。」

砂の感触が広がって、味のないお刺身が柔らかく潰れていく。キュンは「ほんとにね」と照れていたのだけど、私と目があった時、目じりを下げて弱弱しく微笑んだ。それから私にだけ見えるように右手をこちらに押し出す。「ストップ」とか「大丈夫だから」といいたげな動作だ。

実のお母さんがそんなことするわけないのに、なんだか、キュンがいじめられているような気がして悲しくなった。

「キュンは・・・きれいですよ。」

何かの返事のとき、耐えられなくなってそうこぼす。お母さんの顔から笑顔がすーっと消えて「えっ」と拍子抜けした声がもれる。きれいに循環していた空気が、ゆっくり止まっていく。

「あっいや、あはははは。いつまでこっちにいられるんですか?」

「そうねー帰る前にまどちゃんともう一回くらい会いたいわ。それにしてもまどちゃんは女の子らしいわねえ。キュンといると男の子といるみたいなのよ。変な声してるでしょこの子!まー男みたいにでっかいから夜道頼りになるけどねえ。あはははは!」

たぶん、私が想像するようなことを思って言っているわけではない。のだと、思う。

子供の頃にこういう経験がないわけじゃない。私が褒められた時にお母さんが「いえいえぜんぜん~そんなことないのよ~。」と笑って手を左右にひらひらさせている思い出。きっとこれもこういうことなんだよね。ただの謙遜なんだから、私が気に病む必要はないことなんだ。

「キュンは平安に生まれてたら美人だったのかしらねえ。」 

目が細い、男のようだ、お父さんに似て容姿がよくない、笑うとブスだ、繰り返されるその言葉を聞きながら、私は口角だけをあげる。キュンは何度も「かわいく生まれたたかったなー!」と残念そうな声を出してふざける。

このひとはキュンのお母さん。当たり前だけど、キュンの大切なお母さんだ。だから私が何かを思うことのほうが厚かましいはずなのに、けどわたしはどうしてもキュンに「かわいく生まれたかった」なんて言わせたくなくて、聞くたびに、辛くなる。

なんでだろう。キュンはきれいなのに。

今のキュンがきれいなのに。

彼女の容姿が笑われるたび、二倍の褒め言葉を伝えたくなる。

でもこれは、多分空気的に間違っているんだろうな。

なんでなんだろう。キュンは、すごく、きれいなのに。

どうして今「もうちょっと顔が良かったら」なんて言って、頭をかかないといけないのだろう。

 

*自己評価とは

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あっという間に食事が終わり、ビルの出入り口でそれじゃあ、とお別れのご挨拶をする。キュンたちは更に妹さんと合流する為に移動して、私は帰るために渋谷駅に戻る。がやがやする人波を進んでいると、知らない人にドンッとぶつかった。痛い。

すごく痛いけど、気にしてないような顔で進む。

時々何の脈絡もなく、私を小さくてかわいいと褒めるキュンが不思議だった。私の身長は157センチで特別小さいわけではない。私も自分に自信がなくて、恥ずかしくて昔スカートが履けなかった。でもキュンはそれを知ってから、スカートを履くたびにいつも大げさなくらい私をほめた。

「かわいい、何を着ても似合うね。」

アメリカのホームでドラマみた親子のように仰々しく、女の子らしい服を着るたびにそう言ってくれた。私はそれを真にうけたわけじゃない。でも私が何かすることを喜んでくれる気持ちが嬉しかったんだ。私もキュンが始めることは何でも祝福したいと思った。

けど私が応援しなくても、キュンは本当にきれいだ。見惚れる人がいるくらい。

さっき衝突した右肩がじーんとする。なんだか泣きたい気持ちになる。電車を待っている間、下を向きながら、「悔しい」と思った。

白くて透き通る肌に、明るい茶色の目はすこしさびしそうな切れ長。手足は細くて長くて、ユニクロのTシャツを着ていたってさまになる。

めったに笑わないけど笑うとこっちもつられるようなあたたかさがある。

好きな人達の好きなところは、数えきれない。

だから誰かにけなされるのを見るのは、なんだかとても悲しい。

彼女が今、「これが自分だ」と評価する基準は本当に自分で考えたものなのかな。

わからないし、どこまで踏み込んでいいのかも判断できないでいる。

 

それから数日たってキュンからメッセージが届く。

「この前話してた人だけど、やっぱり、私なんかが誘っても迷惑かけちゃうからあきらめようと思う。」

返信文を考えながら、いつも私のことばかり褒めるキュンの顔を思い出す。

同じように私が彼女を褒める時、それを否定する前に数秒だけ、自分に言われた事がわからないかのような丸い目をする。そんなこと言われる可能性がないと思っている人の顔をする。

キュンのお母さんのこと、信じたい。

でもこの気持ちをどうやってなくせばいいのかわからない。

わかってほしくなる。分からせようとすることに意味なんてないんだけど。

けどやっぱり悲しい。

自分のことをかわいく生まれたかったなんてキュンがいうのはすごく悲しい。

それは私のエゴだけど、エゴだけどやっぱりとてもいやだ。

そのために自分が何を言えるか、まだ全然わからないけど、キュンが頭をかいて自分をけなさなくてもいいように出来ることがあればいくつでもしたいなと思った。

だってキュンは、ほんとうにほんとに、きれいなんだから。

 

 *あとがき

お母さんを責めたいわけじゃなくて、キュンが大切に扱われてほしいなあと思ったのでした(っ´ω`c)

それではまたお便りします

 

円野まど