こちら孤島のまどよりお便りします

円野まどの恥の多い日々の記録

日々の詰め合わせ 十九号

〒みなさま

こんにちは 足のつめを切り忘れることがある怠け者の円野まどです!

日々の詰め合わせ十九号、七月に更新できなかったので七月のお話も混ざっていますがこんな夏を過ごしております・・・という文通気分でお送りいたします。

みなさんの近況などと合わせて思い出していただけたら光栄です( ´ヮ` )

それとちょっと私のプロボッチスキル(1人行動に慣れているため、まわりの話をよく聞く癖がついてる)が際立つ感じになりましたがよろしければお納めください!

 

 

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*登場人物

しゃん 私のパートナーで家主。かなりの福耳で、うっかり耳にぬる日焼け止めを忘れると真っ赤になってしまう。

でんきゅう 私の弟と子供と親友のちょうど間にいる。最近は筋トレを強化しており、「プロテイン」という単語を一日に発する回数が増えている。いや、増えすぎている・・。

私 筆者円野まど。まるのまどです・・・。気管支炎がいまだに治りきっていない。ずいぶんよくなった為調子にのっている。コンビニはローソン贔屓。

 

*天使目撃情報

病院に行く日。

午前8時というのに、汗がたらりと流れるような気温。

とろけるというか、もう攻撃されているに等しいようなそんな朝だった。

ミーンミィンミンミン!みたいな蝉の音と、幻が見えそうな暑さ。

バス停には先客がいて、小さな女の子と手をつないでいる男性が背筋を伸ばして立っていた。女の子はひらひらとしたワンピースを着て、こちらも同じようにまっすぐになっていたけれど何度も父を見上げて大きな笑顔を広げていた。

彼女にはたぶん、暑い中おお真面目に過ごすことは戯れ。

明るい光の下にいるこどもは美しくて、なんだか和んだ。

もうすぐバスがくるので私は日傘をたたむ。街路樹の葉がぴくりとも揺れない。

風ひとつびゅうって吹いてくれたら涼しいのにな、とか考えてゆらゆらしてたら

「あーもうあっちぃなあ。」

前に並んでいる父親であろう男性が吐き捨てるように言った。

思わず彼らに焦点を合わせる。

すこし乱暴に聞こえたその声に、まだ小さな女の子は固まるように強張って、そっと、手を離した。男性は「しまった」と思ったのだろう。

「あっ、ごめんねお父さん大きな声出しちゃった。」

すぐに優しくゆっくり言い直す。

それを受け止めた女の子は首を横に何度も振った。

「おとうさぁん。あのさ。」

「何?」

こいこいと自分の顔で手招きするように指を動かす。内緒話をせがんでいるようだ。

男性が彼女の目線に合わせるようにかがむと、女の子は彼の頬に自分の頬をぴったりくっつけて二、三度感触を確かめるように頬ずりしてこう言った。

「お父さんこうしたら元気?」

「うん。すっごい元気。」

「フフフくっつくと暑い?」

「うん。すっごい暑い。――ちゃん、汗かいてる。」

「アハハハ。ぬるぬる!」

「アハハハわざと?」

「ちょっとわざと。」

「もー!」

結びに二人で、大笑いしあった。

それからすぐに通過のバスが通り過ぎた後、頬をなでるくらいの風が吹いた。

男性の顔は見えなかったけれど、女の子はご機嫌にくるくると一回転した。

小さな白い歯が、かわいくて、ぴかぴか太陽に跳ね返るたび天使みたいだと思った。

 

 *それ、コナン君の友達

七月七日より少し前のこと。

でんきゅうは諸事情により日本の習慣や行事を知らないことがある。

大きなスーパーに行った時、大きな笹に飾られた色とりどりの短冊をぼうっと眺めていた。真横のテーブルにご自由にどうぞ、と短冊とマジックが置かれていた。

「七夕する?」

のぞきこむと興味がなさそうに手を横に振る。

「いや、どうでもいい。」

こういう反応をする時はその行事を経験したことがない。

私は彼がそれをしたいかしたくないか、必要か不必要かそのあたりをあまり考えずに、

思い立ったら大体ほとんどのイベントを行うことにしている。

知っていたほうがいいとか、経験させてあげたいという気持ちがないわけではないけれどそれは感情のほんの一割くらい。

私は何でも楽しそうなことはやっておいたほうがいいと思う性質なのだ。

そういうことを知るのが好きなので縁起や成り立ちについてはよく調べるけれど、最後は人と一緒に一年を面白くする何か、何ていうか美味しい思い出にしたい。

なので私の七夕する?は短冊を書いた後は縁起のご馳走を作ったりする程度の気持ちで声をかけた。彼は子ども扱いすると、痒そうにするので今回も眉をひそめて首を振った。

「いいよぉ、俺七夕なんか別にどうでもいいし。」

「短冊だけでも書いていこうよ。とりあえず私は気管支炎にもうなりませんようにだ。」

いやいい家が見つかりますように・・・?とか夢という名の欲望をふくらませているとちらっと子供の書いたであろう、「ままだいすきだよ。」という願いですらない、純粋の固まりが見えた。

しかしダーティな大人である私は自分のバディの心配をするんだぜ・・・とちょっとハードボイルドな顔をして「のど、はやくなおりますように」と書こうとしていると、でんきゅうは短冊の群れを珍しそうに見上げながらこう言った。

「いや俺七夕知ってるし。別に気ぃ使わんで。」

「おっ、子供の頃したことある?」

「ないけど知ってる。」

これは知らないやつだ、と思い、織り糸になぞらえたそうめんに卵焼きとか彩をそえてーそれだけじゃ足りないよなー・・・とメニューを考え始めると、彼は照れくさそうにまた腕を振ってこう言った。

「もう、俺七夕のこと、知ってるからいいってば!俺にはみつひことその彼女のことなんかどうでもいいから!」

なんとなく面白かったので、しばらく彦星について訂正はしなかった。

 

*暑い日

夏に体力を試されている。ような気がする。

コンビニに行くのすら汗をかく。

アイスを買いに出たら白いシャツの群れが見える。

近くの高校の男の子たちが4人くらい。

学校帰りなのだろう。

制服のまま店の入り口の脇に固まってアイスバーを咥えている。

左手にはチキンらしきものを持っていた。

両方食べるとはさすが男の子だなと謎の感心をしてお店に入った。

アイスとドリンクを買ってレジに並んでいる時、外を見るとまだ彼らはお店の前にいる。しきりに「あちい」「あちい」と挟んで会話していることだけ店内まで届いた。

もう一度横切るのがちょっと恥ずかしくていやだなと思う。

男の子の集団の真横を通るのはやっぱりすこし緊張する。

レジは3人ほど並んでいて私の順番はまだ来ない。

ぼーっとカウンターの上にあるコーヒーの値段表を見たりもしたけれどすぐに終わってしまって、また視線は外へ。

すると、ソーダーのアイスバーを持っている男の子達が不審な動きをしている事に気がついた。

コンビニ前の横断歩道を渡ると、廃業してしまった商店があって、

そこの軒下には自動販売機が二つ残されており、今でも利用できる。

そして今ちょうどその販売機の前に制服姿の女の子が二人いて、立ち話をして留まっているようだった。

1人の男の子は何度も首を捻ったり、肩にかけた鞄を直すようにそちらへ顔を向ける。私がお店に入るときも持っていたそのアイスはおそらくほとんど売られたときの姿のまま。本人たちはとても自然なつもりのようだが、後ろから見ていると露骨なまでに向こう側を気にしている。夢中、こういうの夢中って言うんだ。

アイスが溶けて落ちないか勝手に心配をしてしまう。

そして、これはもしかしてという下世話な心が沸き始めると、会計の順番が来た。

結局私のレジが終わっても男子高校生たちはまだコンビニの前で語り合っていて、まあいいかと思って店を出た。横断歩道の前で信号機が青になるのを待っていると、通り過ぎる車がクラクションを鳴らして去っていく。

轟いた音に驚いたのか女の子の顔がコンビニの方に向けられる。

「あれー!なんかいるー!」

「マジだ、いつからいたのー?」

道路幅10メートルくらいかな。

かわいい声は弧を描くようにきれいで緩やかに投げられた。

私は信号を渡ってまさに彼女達の側に行く所。

背中から怒鳴り返すような声が重なる。

「あれーお前らこそいつからそこにいたの?」

「マジか、いたの?」

「はー全然気がつかなかった!」

「えーいつからいたの?」

こちらはストレート、たぶん変化球のつもりの上ずった言葉が飛んでいく。

そんな彼らのやりとりを聞きながら青になった信号を渡る。

女の子達は「アイスに夢中すぎでしょ。」と笑いながら手を振っていた。

なんかニヤニヤしたくても眩しくて目が細まる。

私はあまり高校時代に戻りたいと考えたりはしないのだけど、自然にいいなと思った。

もう一度あの時に・・・、というわけではないけれど、そうではないから、しばらく眺めていられたらいいのにと思いながら家路についた。

 

 

*瓶詰めの牛乳

真夏のちょっとした楽しみ。

頬が真っ赤になるまで歩いたら瓶詰めの牛乳を飲み干すこと。

牛乳やさんで買えば空になった硝子瓶を引き取ってくれるからありがたい。

普通の時でも最高だけど、ちょっと行き詰ったなって時汗をかいてお腹がすくまで歩いた後で呷るとなんとなく、どうにだってなるじゃないかという気持ちになる。

しゃんと二人、少し重い話をしながら立ち寄った旧軽井沢銀座通りの物産館。

想像よりずっとひんやりしていて牛乳を受け取るとき思わず「わっ冷たい。」という声が漏れた。

するとお店の奥様が笑いながら「冷たいよー!熱いとでも思ったのかい?」と笑いながら私の背中をパンと叩いた。数秒驚いたあと、私は全身の力が抜けていく思いがした。

時々誰かに傷つけられないかおびえて私は勝手に身構える。

その時はいりすぎた力がうまく抜ける、ひそやかな儀式のひとつ。甘い牛乳。

 

*弱気な日

七月の終わりくらい。ついに喉がしまるような感じで小声しか出せなくなった日。

もうかれこれ一ヶ月以上気管支炎に苦しんでいるのだけど周囲もざわつき始めていた。

もともと体は強くないのだけれど、これはあまりにも、という空気が広がる。

他の部分も含めて精密検査をしたほうがいいのでは、とかこの先のことを悲観する声も聞こえてきた。

私はそれは可能性程度にとどめて、今の状況を冷静に分析しようとした・・・などというわけもなく、わかりやすく動揺し、落ち込んでいた。

少しずつ、食が細くなっていく。

これからどうなるのだろう、という様なことを考える。

窓から眩しい光が差し込む。

曇っていても晴れていても、雨が降っていても立って歩ける世界は綺麗だ。

新しいものが見たいのに、私はずっと同じベッドにいる。

弱気な感情に覆われそうになっているとしゃんが帰宅した。

「喉いたいの?かわいそうに。まどちゃんなんて口が本体の妖怪みたいなモンなのに!」

これは失礼なようで実は本当のことだ。私はいつもぺらぺらぺらぺら喋っている。

楽しくって楽しくっていろんなことを見つけてはねえねえと話しかける。

彼はそのまま深刻な空気をビリビリに破くように「円野まど、口部分が本体説」の詳細を続ける。次はどこが本体になるのか・・・みたいな予想と検討を重ねる。

有力な候補は手だった。

喉をあたためるために首にタオルを巻いていると、それをニヤニヤみて私のむくんだ顔が面白いと笑い転げる。それから牛肉うどんを作ってくれて、私がそれをたいらげる様子を見てまたニコニコしていた。私はつられて一緒に笑って、声がうまくでなくても身振り手振りでたくさん話すほど元気に過ごした。

それから何日かして、よくなり始めていると病院で言われた日の帰り道。

彼は少し前を歩いて振り返らないまま、「今度はよくならないかと思ってちょっと不安だったんだ。」という話をした。

そうだった、この人は私が陰気になる時なぐさめるようなことは言わない。

悲しむ仕草も見せない。

ただ、笑い飛ばせるようにしてくれるのだ。

そのことを笑ってしまえるように、振舞ってくれるのだ。

私はそれにいつも、いとも簡単に救われてしまう。

そして私もいつでもこの人を救おうと思った。

 

*あとがき

ほとんど七月の話になってしまいました。

お休みしていたぶん、こんなことがあったのですとお話したいことがたくさん。

読んでくださった方、本当にありがとうございます。

体調のため軽井沢に行っていた時があるのですけれど本当に長野は素敵なところだと思いました。ツイッターにも貼ったのですけれど、私の夏はこの一枚(文末写真)に集約されてしまうレベルで浄化されました( ´ヮ` )

無理に楽しそうにする必要なんてないのですけれど、楽しんでやれることを探したり、楽しんで取り組んでみるということはわりと自分に良い物を運んでくれる気がしています。それもできないくらい力がわかないときは、とにかく自分をお坊ちゃまお嬢ちゃま扱いしてあげてください、本体はきっと、疲れているのです。

毎日あなたとわたしにいいことがありますように・・・!

あっ、ごく近況のことなのですが、新宿駅に折りたたみの日傘を忘れました。

持ち物に名前と電話番号を書くべきか、迷う円野がお届けしました・・・。

 

それではまたお便りいたします!

 

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 円野まど