こちら孤島のまどよりお便りします

円野まどの恥の多い日々の記録

私の友達だったひと

 〒みなさま

 

じつは私は人が驚くほど意気地なしだった。

私はいつも収納の前でこのブログを書いていて、その扉を引けば中身は可動式の本棚が入っている。そこに私が一回もページをめくったことのない本がある。

それは私が大学生の時、バイト先で出会った女の子がプレゼントしてくれた物だ。

その頃二日に一回くらい、コンビニでおにぎりやあんぱんを買って食べたら、あとは学校とバイトと本や聴かないレコード(部屋に置いておくと絵のようで落ち着いたのと、やり方によっては音がなるという性質が好きだった)を眺めたり散らかしたりして眠った。

私は一人暮らしをしていた。

足りないといえばお金は送ってもらえたと思うけれど様々な事情があってそれはしないと決めていた。

朝早く起きて夜遅く眠ってアルバイトをして、そして好きなものを買って暮らしていた。不衛生なことは嫌いなので洗濯はよくしたけれど、部屋には物があちこちに落ちていて、面倒なので部屋の真ん中にベッドを置いて、酷いときは玄関で靴を脱いだあと数歩歩いてジャンプでベッドに入った。

人を見ることが好きだった。

けど人と関わるのは怖かった。

誰かの喜ばしい顔が好きだった。

でも誰かと深く接して、いつか笑顔が憎悪に変わることが怖かった。

だから都心の大学を選んだ。

ここでは私が一人でコーヒーを飲みながらぼんやり通りを眺めるだけで悲喜こもごも足をつけて過ぎ去っていくからだ。

暗い人だとお笑いになられるかもしれないけれど、それだけで私はほっとしたしそれなりに満ち足りていた。

誰かと摩擦し続けて18年経っていたから、もうできるだけ誰も不愉快にしたくなかった。

子供の頃から私はゲームが好きで、その攻略のことで男子に話しかけられることもあった。時々彼らが遊びにきたり、呼ばれたりした。

自然な流れで男好きだと言われたことがある。

私はそう言われることが本当に嫌だった。

事実じゃないなら気にしなければいいだけなのに、その時は無視できなかった。

私はなんども、男だったらと考えたことがあるから。

近所の人や法事の親戚の人やさまざまな噂で聞かされた。

時には私の両肩を掴んでこっそりと、耳打ちするように。

私が生まれた秘密。

その時は本当にそれだけが真実だと思っていた。

だから女性を売りにしていると思われることは本当にいやだった。

スカートもワンピースも着なかった。

男の子になりたかった。

見た目をまねすれば強くなれると思ったから。

母がそれを私が自分の選択でそうしていると思ってユニークだと喜んでくれていただけなのに、やっぱり男の子が欲しかったのかなと考えるほど拗れていた。

ばかだったから。

男物のぶかぶかのしゃつをサイズを見ないで買って、それを着て歩いた。

ショートヘアは逆に目立つので一度してそれからはやめた。

ただ肩や背中くらいのストレートのロングヘアーが一番景色に埋没できるような気がしてそうしていた。

伸ばしたままにしていた。切りにいって会話をするのもいやだった。

長すぎると感じればはさみでバツバツと自分で切った。

別に誰にも色目をつかっているわけじゃないのにあれこれいわれることに本当は少し苛立っていた。

けど、そんなの誤解されないようにうまく人間関係を築けない私が悪いんだなと最後はいつも自分の責任が見えるだけだった。

なおす気力もないあたり、年相応以下に我侭で幼かったと今ならわかる。

私は誰かと付き合いが薄い分だけただ未熟だったんだ。

一人暮らしを始めて、誰かの何かの視線や審査にさらされずにいられることが幸せだった。

大学三年の時に始めたアルバイト先に少し年上の女の子がいた。

わたしはその子と一緒に研修を受けることになった。

とても明るい女の子で、すごくパワフルなかわいい女の子だった。

学部は違うけれどその子の弟さんと私は同じ大学らしいのと、その子の卒業した大学は私の大学の姉妹校だった。

なんとなく、話がはずんだ。

九割くらい、その子がいい子だったから続いた会話だったけれど、なんだかつられて笑顔になるようなそんな女の子だった。

弟さんに朝お弁当を作って働いて、今はバイトしながら看護学校に通っているという。

将来のことを考えて、就職より手に職をつけなおしたいと思ったと言っていた。

彼女には結婚を約束した男性がいて、出産をしてもカムバックしやすい仕事をとも考えたらしい。私は私とそんなに年齢の変わらない彼女の人生設計に感服したり、ただ女の子と普通に話せていることにものすごく嬉しくて、眠れなかった。

彼女が私に普通の話をしてくれることで何かがたくさん満ち足りた。

失礼なことはたくさんあったと思う。

何せずっと人と話していなかったから。

当時はしゃんともまだ会っていなかったので、注意すべきところは本当にあったはず。

それでも彼女はニコニコと話を聞いてくれた。

バイトが楽しくなった。

私は当時あまりおなかがすかなかった。

だけど誰かのふくふくとした笑顔をみてるだけで、胸がいっぱいだった。

人がたくさんまわりにいて、もう誰かの色んな言葉を気にしなくていいということがただ幸せだった。

男好きだといわれないように目を合わせないようにプリントを渡さなくてもいいし、好きな場所で本を読んでいてもおかしいといわれないし、バカにされるために何かをしなくてもいい。それだけで私はらくだったし、楽しかった。

景色のように振舞うことができればよかった。

誰かに嫌われても、私は誰も嫌いではなかったから、ただ相手を不愉快にさせないようにできることを願った。

大学はそういう場所ではないと思っていたけれど、思いのほか先生たちはやさしく身近で、どの場所が静かだとか、こんな面白い話があるよとか、私は知らなかったことをたくさん教えてくれた。

家に帰ったり図書館によって、夢中でいろんなことを調べた。

バイトの時にあの子と話すことも楽しかった。

家でよく眠れることもなにもかも、なにも不満はなかった。

だから彼女が大学に来ていると連絡をくれたとき驚いた。

大学のカフェにいるというので、急いで向かうと彼女はかわいいバスケットを持っていて、私に渡してくれた。

「弟とまどちゃんに持ってきた。良かったら食べて!」

と私にパンとケーキをくれた。彼女が焼いたものだった。

そういうことは時々あって、それから少し経って彼女の家に招かれるようになった。

彼女が弟さんと住んでいる部屋は、私の一人暮らししている部屋のある駅と一駅しか離れていなかった。

私は浮かれたり、緊張したりでいつもうまく話せず、帰りに携帯にメッセージを送って謝っていた。大事なことばはいつも会っていない時にばかり浮かんだ。

そしてその年のクリスマス彼女は私のために近所のレストランを予約してくれた。

私のクローゼットは男物のシャツばかりだったので、ちょっと考えてしまった。

変な格好をして恥をかかせても、多分彼女は気にしないだろう。

少し悩んで、彼女のことを信じて何かあるならそれは私の行いが悪いのだと思い、出かけていって地味だと思えるスカートと女の子が着るためにつくられたシャツとカーディガンを購入した。恥ずかしくて店員さんと目をあわせることもできず、普通だろうと思ったサイズを選んだ。すこし緩かったけれど、これで誰かがギョッとするような見た目ではなくなる。

驚くことに彼女は私なんかとすごせてうれしいと言ってくれた。

プレゼントも貰ってしまった。

その1つがこの本だった。

彼女はいつか私と彼女が別々な道をいくかもしれないことを予見していて、それでもそのとき、あなたのことを信じているから、才能を発揮して欲しいと

その時私がやってみたいと思っていた夢を後押ししてくれた。

少なくともわたしにとってまどちゃんは特別だから、と言ってくれた。

私にもあなたが特別だよといいたかったけどやっぱり声がでなくて、帰るとき駅からまたメッセージを送った。

そのこが送ってくれた「私を踏み越えていってほしいくらい、私なんかがなかなか会えなくなるくらい頑張って」というメッセージを思い出して涙がでた。

それから色々あって、そのこと私の道は本当に別れた。

彼女と出会ってちょうど一年後、私はしゃんと出会った。

彼は女だとか男だとか以前に、美しくなければ許さないというハウル真っ青の美至上主義者で私のクローゼットは黒と白と灰色だけではなくなった。

ワンピースを着たとき、彼と彼女はまるで私の保護者のように褒めた。

似合っているともきれいだとも自分で思わないけど、嬉しそうにしてくれることが嬉しかった。

わたしは、ずっとこれが着てみたかったのだとその時はじめてわかった。

自分のことなのに、目が覚めるようにそれを知った。

そうして彼女は、安心してお嫁にいけるようになったと笑った。

そして半年後彼女は結婚をして引越しをして幸せになった。

あんなに幸せになるべきひとはいないほど、優しいひとだった。

私はあのとき貰った本を一ページも読めないでいる。

なんだか、読んでしまったら何もかもが昨日になってしまう気がして怖かった。

もう少しだけ、もう少しだけ変わることができたら、彼女にまた連絡をしてみようと思った。

また前みたいに仲良くしたいとか、構って欲しいとか思っているわけじゃなくて

一回だけ、お礼がいえたらいいなと思った。

きみがくれた信頼が、今も私を動かすときがあるから。

誰でもはじめられるブログだけど、会おうと思えば誰とでも出会える。

この本には、その時どうやって人に伝えればいいのかが書いてある。

でも読めないでいる。

もっと頑張って、ちゃんとじょうずにかけるようになるまでなんだか、

顔向けできない気がするのだ。

私は何かすごいものになれると思っているわけじゃない。

でも、私にとってはすごいことなのだ。

毎日誰かに何かを話せるということ。

今、誰とも争わずにいられること。

ずっと欲しかったことだから。

今度はだれかを幸せにできたらいいなと、調子にのってがんばってみたいと思っている。できたらいいな、できるようになりたい。

こうやって私は誰かにすこしずつ直してもらって生きていて

まだみんなにそのことを返せてないって、書くたび思います。

なにかをできるようになりたい。

 

じょうずに話せるように頑張りながら、またお便りします。

 

円野まど

 

 

 

 追伸 りと (id:rito-jh) 様、もといレオナルド・ダ・りと様

に言及いただきました!好きな音楽を気に入ってもらえるというのは嬉しいことです・・・!!!ムハハハハ!!

 

 

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